サラブレッドに「心」はあるか
本のご紹介第2弾
サラブレッドに「心」はあるか 楠瀬良著 中公新書ラクレ
週刊競馬ブックに連載されていたコラムの単行本化。馬博士の著者が様々な実験をして、その結果を分析したデータをもとに馬の性質や特徴を解説する。350度の視野角から始まって、コウモリ並みの聴力など感覚や体の話から強い馬の作り方、サラブレッドの歴史まで。巻末には若き日の武豊との対談が添えられている。
大きくは以下のとおり。
第1章 馬のこころとからだ
第2章 勝つ馬と負ける馬を分けるもの
第3章 強い競走馬をどうやって育てるか
第4章 サラブレッドの歴史と記録
[対談]武豊vs楠瀬良
特に興味深いのは、かなり競馬に関連して馬の生態を分析していること。馬の耳を見れば精神状態が判るのは以前からよく聞いてはいたが、具体的に文字になると納得できる度合いが高まる。パドックや返し馬での見るポイントは武豊の対談と併せて読むと頷ける部分が多くなる。まったくのテン乗りの時にどういう姿勢で馬と対峙しているか、何を判断材料としてレースを組み立てることを想定しているかなど内容が面白い。
勉強になったのは手前換え。右コーナーは右手前、左コーナーは左手前で走るのは知っていても、これができていないと「逸走」の原因になることもあるということまでは知らなかった。逆手前ではカーブに入ることはできても出ることはできない。なので4角手前で逸走する馬が出るのだという。右回りではコーナーで右前脚が1本だけ接地している瞬間があり、それだけ負荷がかかる。だから直線では左手前に替える。左手前に依存する走りをする馬は中山では良くても東京の直線では甘さが出る。府中は左手前でなければコーナーは回れない。直線は苦手な右手前か、左手前でコーナーからずっと走り続けなければならないから。一昨年のホープフルSでのランドオブリバティの逸走もきっとこれだろう。
また、入れ込んだり、人間(厩務員や騎手)のいうことを聞かない気の悪い馬は統計的に種牡馬に依存するようだ。この遺伝は配合ではわからない。具体的な種牡馬の名前を出すのは控えていたが、はっきりと傾向が出たらしい。キセキがゲートを出ないのも父の血のなせる業かも。
様々な形で実験をして、データを取って、統計手法で判断をする。読んでいて頷きながら楽しめた。具体的に馬の名前が出ていたらもっと面白かったのに。そこだけが残念。いい方の事例ではディープとか実名も出ている。残念な方で名前が出ているのはラガーレグルスくらい。この馬をどれほどのひとが記憶しているだろう。
総じて、興味深く楽しんで読める馬の本だった。馬に興味がある人にはお勧め!
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